私傷病休職ーその3:私傷病休職を経ない解雇の可否
雇用者は、私傷病により欠勤を重ねる労働者を、休職させることなく解雇することが
できるだろうか。
この点、私傷病休職制度は、一般的に解雇猶予措置と理解されていることから、就業
規則等に休職制度が設けられている以上、休職しても労働能力の回復しないことが明白
でない限り、雇用者に求められる安全配慮義務の一環として、使用者には休職を命ずる
義務があると考えるべきです。
確かに、休職制度の規定の内容にもよりますが,休職制度が労働者の福利厚生の観点
からの解雇猶予制度であるため,傷病休職制度があるからといって, 直ちに休職を命
じるまでの欠勤期間中に解雇されない利益を従業員に保障したものとはいえず,その意味
で,傷病休職制度がある場合に同制度を利用することなく解雇したとしても、当該解雇
は無効とはならないとした判例もあります。しかし、この判例は、治癒の見込みがない
ことが明らかなケースでした。治癒の見込みがないことが明らかでない場合は,雇用者が,
労働者に休職制度を適用する余地があるのに,これを適用せずに労働者を解雇した場合
には,解屈権の濫用として違法となる可能性が高い、と考えておくべきです。
傷病休職中の解雇についても,治ゆの見込みがないことが明らかなケースを除いて,
解雇権の濫用として無効となる可能性が高い、と考えておくべきです。
なお、以上は、労働契約、就業規則等に休職の定めがあることを前提とし、休職の定め
がない場合は、解雇事由に該当するか否かが問題となる。
そして、私傷病による就労不能は、原則として、解雇事由に該当する。ただ、例外的に、
就労不能期間、回復の見通しなどから、解雇が無効とされる余地もあります。
H29.12.5現在